D&DEPARTMENT PROJECTが東京・渋谷のd47 MUSEUMで開催中の「NIPPONの47人 2017」展(〜10/9)をreal localが独自の取材で深堀りします! 地域のライターが、地元の出展者を取材するスタイル。こちらは鹿児島のライターによる「ONE KILN CERAMICS」城戸(きど)雄介さんへのインタビューです。
d47 MUSEUM「NIPPONの47人 2017 これからの暮らしかた – Off-Grid Life –」のサイトはこちら
仲間を招いて新作発表会を兼ねた食事会の風景。(写真:コセリエ) 城戸雄介さんは、有田焼(佐賀県)の窯元で修業をした後に、故郷の鹿児島へ戻り2008年に陶器ブランドの「ONE KILN(ワンキルン)」を立ち上げた。
ONE KILNとは、「ただひとつの窯」という意味を持っている。
「ONE KILN」城戸雄介さん。 ブランドの立ち上げ当初、オリジナルの物を作るぞという強い思いがあったという。
そして生まれた、桜島の火山灰を使った磁器の「ASH(アッシュ)シリーズ」。
火山灰(ASH)と鉱物を独自に調合した釉薬を使用している。
それにより、使い込まれた鉄のような質感が生まれた。
他に類を見ない、ONE KILNの代表作となった。
ONE KILNの代表作となったASHシリーズ。盛りつけられているは鹿児島の郷土料理。 ONE KILNの新作発表会は、いわゆる展示会とは異なる。
仲間を招いて、TABLEs(テーブルス)という活動を通して食事会を開催している。
質の高い料理は好評で、鹿児島の郷土料理のイベントを開催して欲しいという依頼が舞い込んだ。
地元で獲れた肉や魚や野菜、地元で作られた醤油や塩などの調味料。
それらを使って作られる料理を乗せるのに相応しい器について考えていたときに、自分の中で焼き物の定義が変わったという。
「器は料理を乗せる道具でしかないし、それだけで完結するものではない。食卓があり、料理があり、それを囲む人たちが居て、初めて成立するのではないか?
テーブルを飾るには、料理人の力が必要だし、生産者の力も必要だ。さまざまな人と関わりながら、テーブルは“創られる”。
その空間に人が集まっていないとダメで、家族や友人が食事を介して、楽しい時間を共有することが重要だと考えるようになった」
南さつま市に住む友人の畑から粘土層が出てきた。直ぐに土を掘り行った。 そこから「CULTIVATE(カルチベイト)」シリーズが生まれる。
CULTIVATEとは、「耕す」という意味がある。
「いろんな人との関係性を大事にしたい。
まず、南さつま市に住む農家の友人の畑にある粘土層の土を使うことにした。
そこで取れた土を使って、自分が器をつくり、同じく鹿児島の知人の料理人がつくる料理を乗せて、そこに食卓ができあがる。ただひとつの食卓」
仲間を招いて新作発表会を兼ねた食事会の風景。会場は浜辺だったそうだ。 ちなみに、器をひっくり返した裏面には、土の産地の緯度と経度を刻印してある。調べるとどこの場所かわかる仕掛けになっている。
CULTIVATEシリーズでは、毎回、産地と原料を器の裏面に刻印している。 自分の作品を創る、から、みんなでひとつのテーブルを創る、へ意識が変わったと城戸さんは語ってくれた。
(写真:磯畑弘樹)